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まえがき
頸髄損傷者のリハビリテーションにおいて,座位,休息の場および移動の手段としての車椅子の果たす役割は大きい.その処方にあたっては,麻痺レベル,残存筋力,体幹のバランス,全身および局所の諸合併症,ADL能力,年齢,生活環境,用途など多くの因子を総合的に判断して適切に行う必要がある.先にわれわれは,頸髄損傷者への車椅子処方の問題を処方変更例に着目しながら,麻痺レベル,ADL能力との関連で検討し,以下の諸点を報告した1).すなわち,
1)各麻痺レベル毎の到達可能なADLのゴールは,移乗動作に関して,C5およびC6/5レベルは移乗不能だが,C6およびC6/7レベルは前方移乗,C7レベルは側方移乗であった(ただし,股関節の可動域制限,高度の痙性,肥満などの阻害因子を有する例を除く).なお,麻痺レベルの表示は表1に示す基準に従った.
2)最終的に処方された車椅子の型は,C6およびC5/6レベルは電動車椅子と標準型の併用,C6およびC6/7レベルはセミスポーツ型のスイングアウトつき,C7レベルはセミスポーツ型のスイングアウトなLが中心であった.これは前述の各麻痺レベル毎の移乗方法に対応している.なお,ここでセミスポーツ型とは,標準型とスポーツ型の中間で,座席の前後差が4cm以上,肘受けがタイヤRに近い型のものを指す.
3)経過中に車椅子の処方変更は51例中23例,45%に行われていた.その多くは,ADLがゴールに達する以前に前医で初回の処方を受けていた例で,変更の理由は,その後の訓練によりADLが向上したためであった.
以上の結果から,われわれは,頸髄損傷者への車椅子の処方は,早期に到達可能なADLを正しく予測し,充分な訓練を行った上で,機能的にプラトーに近くなってから行うべきであると提言した1).
今回は,この車椅子処方方針に従って処方を受けた症例の経過観察をアンケートを用いて行い,われわれの処方の妥当性および今後の問題点を検討し,若干の知見を得たので報告する.
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