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今回まったく予期せぬことに国際リハビリテーション協会(Rehabilitation International,R.I. )のナショナル・セクレタリーをお引受けすることとなった.これは故小池文英先生が15年近くの長期間立派につとめられた重要なポストであり,いわば日本のリハビリテーション界の,外の世界に向けられた「顔」である.小池先生は戦後のGHQとの接衝からはじまって30数年に及ぶ海外の各層の人々との広い交友関係をもっておられたので,正に「日本の顔」にふさわしい活動をして下さった.何よりもあの温厚なお人柄と,しかし云うべきことはあくまでも諄々と説いてやまない.あの信州人らしい一面とが世界のリハビリテーション界の人々の信望を集めたのである.
そのように偉大な先輩の後を継ぐには実は私ははなはだ不適任である.リハビリテーション医学の世界でこそ多少の海外の知人もいないことはないが,それは欧米に限られ,アジアのほとんどの国やオセアニア,中南米,アフリカには行ったこともない.そもそもR.I. 自体についても,東京とソウルの2回のアジア・太平洋地域会議には出席したことがあるが,世界大会にはまだ出席したことがないような状態である.またR.I. ということになれば,医学だけではない.教育・職業・社会というリハビリテーションの全分野にわたるものであり,むしろ最近では医学以外の分野の方が活発なようにさえ思われる.お仕事がら国内でも非常に幅の広い活動をしておられた小池先生ならばともかく,大学という狭い場所でしかやっていない私のようなものにはとても力に余ることであり,そのように申上げてはじめは辞退したのであった.しかし小池先生の残されたギャップは余りに大きいので,多くの人間が分担してそれを埋める他はないと説得され,やむを得ずお引受けすることにした次第である.この上はいろいろと勉強して小池先生の何分の一かでも仕事をしたいものと考えている.リハビリテーションの各分野の方々の御指導・御協力を心からお願いしたい.
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