発言あり アスベスト汚染
研究と対策の一層の進展を/アスベストの制御
瀬良 好澄
1
,
馬場 快彦
2
1国立療養所近畿中央病院
2産業医科大学産業生態科学研究所産業保健管理学
pp.363-364
発行日 1988年6月15日
Published Date 1988/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207694
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一昨年の1月にアメリカ環境保護庁EPAが,今後10年間にアスベストの採鉱,輸入,加工,使用を全面禁止するという提案を行ったことから,わが国でもアスベストの危険性がにわかに叫ばれるようになった.しかし,実は欧米諸国では,はるか以前から社会的な問題として取り上げられており,わが国でも1970年に,アスベスト作業者から8人の肺がん患者がでたことを筆者らが明らかにし,また当時,都衛生研究所の溝口博士が,東京・本郷3丁目の大気からアスベストを検出したことが報道された.その翌年,アスベスト研究で著明なセリコフ博士とともに人体病理の研究を行っているニューヨーク・マウントサイナイ医大の鈴木康之博士が日本で講演され,わが国のアスベスト研究並びに対策の立ち遅れに対し警鐘を打ち鳴らし,また1972年にはNHK番組"あすへの記録"に「アスベスト追跡・肺を冒す粉塵」として新たな大気汚染物質としてスポットが当てられた.しかし,当時の厚生省は「緊急の問題ではない」,「労働衛生上の問題ではあっても,公害にはなっていない」として,がん研究の課題として取り上げることはなかった.
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