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はじめに
老人が大半を占める一般病院の脳卒中患者のリハビリテーションでは,林1)の指摘するように,「安全で円満な家庭復帰」が目的となり,そのために基礎的なADL・歩行の自立が主眼となる.しかし,約9割が歩行自立する壮年患者と異なり,老人患者の場合は,たとえ早期からリハビリテーションを開始しても,半数以上の患者が歩行不能にとどまってしまう2).そして,このような患者の自宅退院には種々の困難が伴ない,退院先が決まらないまま入院期間がズルズルと延長してしまうことも少なくない.それだけに,脳卒中患者の退院先を規定する医学的・社会的諸条件を総合的に把握し,入院後早期からその対策をたてることが必要である.
この点についての検討は主として米国で行なわれており,Shaferら3)は,脳卒中患者がナーシングホームや慢性期病院に転院する主な理由として,重度の運動障害,痴呆,失語・失行,1人暮しを挙げている.Feigensonら4)は,歩行不能患者と排泄動作に介助を要する患者の自宅退院比率が特に低いと報告している.また,Grangerら5)は,脳卒中患者の入院と退院時のBarthel Indexにより退院先を予測することができると報告している.
さらに,視点はやや異なるが,Dowら6),Stephensら7),McCannra8)は,一般病院に包括的なリハビリテーションを導入することにより,脳卒中患者の自宅退院比率が上昇したと報告している.
それに対して,わが国でこの問題を検討した報告は意外に少ない.特に,わが国の家族形態は米国とかなり異なっており,それが脳卒中患者の退院先にも重大な影響を与えると予想されるが,この点について実証的に検討した報告は,林9)を除いてほとんどみられない.
筆者は,すでに,この点について予備的報告10,11)を行ってきた.今回,多数例について改ためて検討した結果,「脳卒中患者が自宅退院するための3条件」を見い出したので報告する.
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