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はじめに
リハ医学において評価(evaluation)という言葉は良く用いられて来た.この言葉は他の医学領域では余り用いられていないようである.リハ医学では,習慣的に他の医学領域で用いられている診断,検査,測定の3つを包含したような意味で評価という語を使っていることもあり,かなりその用い方はあいまいのように思われる.
この言葉がどこからリハ医学に入って来たのか,いつ入って来たのかについては定かでない.隣接領域である心理学において,評価法という言葉が使われている.この辺が出所をうかがわせるものであるかもしれない.平凡社の心理学辞典1)によれば,評価法は,“事物・事象を評価する方法で,評定法ともいう.事物・事象の弁別ということが必須の要件となる.”と述べられている.また対応する英語としてRating Methodが,独語としてMethode der Bewertungがあげられている.これ等の点から,心理学でいう評価法は,意味の解説からは,臨床医学でいう診断に近い感じを抱かせるが,英語からは測定を,ドイツ語からはまさに日本語の評価を感じさせられる.この語がEvaluationという文字通り評価という形でリハ医学にとり入れられたのであると思われる.
すなわち,すでに述べたように,診断,検査,測定の全てが含まれているような用いられ方に次第になって来たのであろう.代表的なアメリカのリハ医学の教科書であるKrusenやRuskのものをみても,評価という章の中に既往歴,現症なども入っており,診断と名付けた方が良いのではないかと思われる.
筆者は近年,リハ医学が1つの専門分科としての地位を確立するためには,診断学が確立されるべきであると考え,診断と評価は区別されねばならないと主張して来た2).すなわち,リハ医学における診断は,他の臨床各科におけるものとは異なり,障害のレベルに応じた障害者の問題を明らかにすることであると考えている.(図1)また,この場合にその基盤をなすべきものとして,次の3つをあげることができる.すなわち,1)医学的諸検査(他科と共通なものである.),2)機能評価,3)心理・社会的評価である.このうち,2)3)はリハ医学に特有なものであり,ここに評価の意味があり,言葉も生きてくると思われる.
このように考えてくると,リハ医学における評価は,診断の所で示したような障害のレベル毎に,その障害を明らかにするための評価法がなければならない.例えば,中枢神経障害に対する神経学的な検査は,リハ医学にとって無用なものではないが,多くの場合,中枢神経の疾病や傷害を明らかにするためのものであって,障害を明らかにするものではない.この立場に立って,リハ医学が進むにつれ,障害の病態生理や機能回復のメカニズムや疫学が明らかにされ,多くの優れた評価法が生れて来た.
そこで,今回は講座として,ImpairmentとDisabilityの評価をとりあげ,専門の諸先生に執筆して頂くこととなった.
第1回目は,その基本的な問題について述べる.
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