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はじめに
障害の重症度や治療効果の客観的評価は,リハビリテーション医学を科学として進歩,発展させる上で重要な要素である.
評価すべき動作としては,歩行,ADLをはじめとして,上肢,下肢の細部運動を含む様々なものがある.しかしそれぞれの動作はどれも複雑であり,評価の客観化・定量化は困難であった.この為,従来の動作解析の多くは,動作各要素(力,角度,位置変化など)の計測に終り,その結果の臨床応用については,必ずしも有用な手法が開発されていなかった.
一方臨床面から考えると,患者自身の実用性から言って,歩行をはじめとする種々な動作の,自覚的,主観的評価の重要性は論を待たない.検査でいくら客観的に良い結果が出ても,患者自身の主観的評価が良くなくては意味がないからである.そこに客観的評価の限界があり,はじめに述べた科学としての客観性が,単なる動作の定量的記述を意味するものでない事を示唆している.すなわちリハ医学においては,いかに臨床に結びついた客観的評価を行えるかが問題となってくる.
この評価を運動学的観点から大別すれば,関節可動域など,ヒト本来の運動機能に対する静的評価と,それらの機能に基づく実際の運動の特徴に注目する動的評価の二つに分ける事ができよう.更に動的評価は,各部位,各瞬間ごとの運動を分析する局所的評価と,運動の全体的特徴を把握する総合的評価に分けられる.この分類に従えば,静的評価はすでに関節可動域テスト,徒手筋力テスト法などが確立されているために,臨床現場における客観化の緊急度は比較的低い.また局所的評価の客観化には,前稿の「歩行分析」の様に大規模なシステムが必要になる点で実現性が低い.一方,総合的評価は,観察すべき対象と判断基準が必ずしも明確でなく,臨床評価における最も主観的評価の一つとなっている.
この様な観点から,本稿では臨床面での実用化を目標とした.小型加速度計とマイクロコンピュータによる,歩行運動の総合評価用簡易計測・処理システムを紹介する.
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