Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
歩行分析のための方法は極めて多種多様であり,光学的方法やエレクトロニクスの技術の長足の進歩に伴って,文字通り日進月歩である.しかし,歩行という運動そのものは,極めて雑多な内的・外的因子の影響を受けた非常に複雑な運動であり,その全貌を明らかにすることははなはだ困難であると言わねばならない.最新のエレクトロニクスの技術を駆使して分析してみても,所詮,群盲象を撫でる程度のことしかできないのではないだろうか.この点,光学的方法,とくに映画は古くから用いられている方法であるが,全体像を視覚で捉えるので,臨床家としては最もわかり易い方法であり,捨て難い味がある.やはり象を認織するには100人の盲人よりも,1人の目あきの方がすぐれているといえよう.しかし私達は最新の技術を否定する積りは毛頭ない.むしろどんどんこれを応用して歩行という怪物の分析を進めて行くべきであろう.歩行分析は現在戦国時代で,いずれ強いものが生き残るにちがいない.私達の研究室で用いられている方法も,やがては新しい技術にとって代られ,淡雪のごとく消え去るものかも知れない.歩行分析に限らず,学問というものはそのようなものであるのだろう.
さて,私自身は1950年代から動作筋電図による歩行分析を行なってきたが,個々の筋から多元誘導によって同時に筋電図を記録することには限界があり,臨床的には使いにくいうらみがある.そこで現在では長崎大学整形外科学教室では,歩行のパターン認識に主力をおき,スティックピクチャーカメラと,踏力計(force plate)を主な武器として使用している.そのほか,ビデオテープに直接歩行を録画し,ポラロイドカメラで連続撮影したり,8mm映画を撮影したり,動作筋電図を記録したりすることを,補助的手段として用いている.ここではわが教室における歩行分析法の概要を紹介する.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.