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はじめに
連合運動とは身体のある部分が,身体の他の部分の意志に従った意識的な運動(随意運動)に際して,意志によらず無意識におこる運動である1).正常者に身体の一部の最大努力による随意的持続運動を行わせると,それに伴った全身の姿勢変化がみられる2).この姿勢変化は緊張性姿勢反応によるものとされ,動作目的にかなったものと解釈されている.中枢性神経疾患ではこの緊張性姿勢反応は解放現象として過度に出現し合目的性を失っている.連合反応もその一つとされ痙性片麻痺でしばしばみられる3).また一側上肢の随意運動の際,その運動パターンの放散(motor irradiation,MI)が他側上肢におこり,その運動パターンは鏡像関係にあるのでmirror movement(MM)と呼ばれている4,5).MMは幼児ほど著明に出現し,年長児では減少し,成人では消失することから錐体路が未熟なためとされている.中枢性神経疾患でもMMは出現する1).従って痙性片麻痺では解放現象として連合反応およびMMがともに出現しているはずであるが,これらを臨床的に分けてとらえる試みは少ない.
痙性麻痺患者の連合反応は姿勢の影響をうけ,頭の体幹に対する位置,頭の空間での位置など運動開始前の姿勢により変化する3).また随意運動においても姿勢の影響は大きく,肢位変化により共同筋の組み合わせは変化する.たとえば正常者にて手関節の屈曲・伸展を行わせると,中等度以上の努力では上腕筋群にも活動がおこるが,前腕筋群と上腕筋群の組み合わせは肢位(回内位か回外位か)によって変わる6).そこで肢位変化のMIにおよぼす影響を正常者および痙性片麻痺患者において分析し,その運動パターンの相違を通じて痙性片麻痺の連合反応とMMの発生機序を検討した.
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