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はじめに
聴覚障害児の音声通信の補助手段の研究はかなり早くから始められ,種々の音声視覚表示法の試作や効果の検討も行われてきた1).ビジブルスピーチとしての,音声視覚表示装置には,①振幅スペクトルの視覚表示器:中心周波数の異なる多数のバンドフィルタを通してブラウン管輝度変調し,音に含まれる各周波数成分の強度を振幅スペクトルで(リアルタイムで)表示する方法(これには1現象式のものと2現象式のものとがある2,3)),②サウンドスペクトログラフ4),③ピッチ・インテンシティ2次元表示器:音の要素のうちピッチとインテンシティをリアルタイムで表示するもの,④ダイナミック・パラトグラフィ5):口蓋への舌の接触パタンを,多数個の電極を用いて連続的に視覚表示する方法,⑤その他,がある.いずれも,聴力障害児,構音障害児(者)の音声の鑑別や構音習得に役立つだろうという目的をもっていた.
開発された補助手段の性能の限界およびそれらによる訓練効果の的確な評価の問題,さらには人間の言語と知覚の関係の本質にふれる問題などが潜在しているが,しかし,すでに実用段階にある機器も多くあるといえよう.とくに②,④の役割は大きい.
今回検討した振幅スペクトル視覚表示方式の1つであるMSV-60(相模電機製)は,音声の周波数分布を100~10,000Hzの間に20個の帯域フィルタで分析し,オシロスコープ・ブラウン管上に2現象(たとえば教師の階段波形と児童のそれ)表示し,時間連続可変分析し,同時に比較して発音の訓練を行うことを目的とするとされている.この場合,ⅰ)どの程度,音の要素を視覚表示する能力があるか,ⅱ)日本語について帯域周波数表示方式がどのような意義があるか,を検討する必要がある.
われわれは一昨年来,これらの点について分析したので6),その主な結果を述べてみたい.
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