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言語治療とは何か
近年,わが国においても,諸外国と同様に言語治療に係わる諸問題が,教育,福祉,医療の各方面で急速に進展してきた.その背景には,言語障害児(者)のこれを求めるニードが昂まってきたことは言うまでもないが,言語治療にたずさわる人(Speech therapistと諸外国では呼ぶ)の数も相当数に達してきたことにもよる.しかしわが国では未だにその専門職制が確立されていないので,早急に身分制度制定の動きが,日本聴能言語士協会を中心として関係諸学会の中に進められている1).同協会では,言語治療士(仮称)の業務内容について次のように述べている.「言語治療士は,正常なコミュニケーション機能の育成,コミュニケーション障害の予防・評価・診断・治療等に関する業務を行う」.
コミュニケーション障害の評価・診断に関する業務の第1は,その障害の発生,経過および関連要因を探究するため面接調査を行なうことである.その主流をなすものは生育歴の調取であり,発達歴(言語歴,障害歴,身体行動面など),医学的既往歴,教育歴,社会歴その他であろう.第2には,障害の評価がある.コミュニケーション障害の実態を明らかにするために,コントロールテストおよび診断検査を実施すること.前者は障害者についてコミュニケーション障害の有無と種類をスクリーニングするために,音韻・意味・統語的側面を含む言語機能検査,声,構音,プロソディー,発声発語器官を含む音声言語検査,聴力やその他発達状況,対人関係,異常行動面などの諸領城にわたる諸検査である.後者すなわち診断検査とは,各障害領域について障害の重症度とその性質を明確にし,予後の推定と治療方針の設定に必要な的確かつ精密な情報を収集する諸検査である.第3には関係専門職からの情報収集がある.このなかには医学的・知的・情緒的側面の情報や教育機関・施設・病院等患者の属する機関からの諸情報が含まれる.これらの諸手続を通して最後に障害の種頬と重症度を判定し,予後の判定を実施しなければならない.
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