巻頭言
リハビリテーション従事者の傲り
荻島 秀男
1
1リハビリテーション・ペインクリニックわらび診療所
pp.507-508
発行日 1980年7月10日
Published Date 1980/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104349
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最近今までの自分が常に患者さんにベストを尽くしたかどうか疑問を持つ.残念ながらその答が“No”という事に心から反省せざるを得ない.米国においても日本においてもリハビリテーションチームとしてはトップレベルのスタッフに恵まれていたためか自分がある意味では“井の中の蛙”になってしまっていたに違いない.養育院では希望者も多かったので脳卒中であれば発病3ヵ月以内でなければ入院の予約も受付けない事にしていたが,受付けてももらえないで他の病院や施設に流れていった患者や家族の方々がどのような経過をたどったのか考えると胸が痛む.ある程度リハビリテーションが日本でも確立されはじめ早期リハビリテーションの必要性が認識されはじめたと喜こんでいたのは全ての思いあがりであった事を痛感させられる現在の相談診療業務である.リハビリテーション関係の人々とのみ話をしていると色々の不平不満はあってもリハビリテーションという大きな枠の中でのみ話をしているので競馬の馬なみである.医科大学の中で理解が足りないといっても各々の大学に1人2人はリハビリテーション従事者は居るし,理解をさせる努力と熱意が足りないのも事実であろう.要するにリハビリテーション従事者がリハビリテーションという美名(?)の大枠にどっぷりと浸り始め,啓蒙や行政への働きかけ,改革,改善は誰かがやってくれるだろう,また自分にはそんな力はないと怠けている事を合理化している傾向はないだろうか.
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