巻頭言
リハビリテーション効果の評価について
佐々木 智也
1
1東京大学保健センター
pp.319
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103977
- 有料閲覧
- 文献概要
病気とそれによる障害は人類にとって最大の悩みであることは,今も昔も少しも変っていない.医療技術の発達する以前に病気に罹った人のために,周囲の人は呪文をとなえ,祈り,温め,さすり,あるいは病気の部分を叩いたりしたことであろう.すなわち,原始的な宗教であるシャーマニズムの時代にすでに現在の物理療法が芽生えていたともいえよう.近代的なリハビリテーションに利用されている物理療法,作業療法,さらに言語療法の起源がここに求められることは,何等支障のないことであるが,その後の発達については,疑点のあることをここに申し上げたい.
医師やナース等,臨床の現場にいる者の間に,何となくリハビリテーションに対する不信感のようなものが感じられる.もちろん,正面切って彼等にリハビリテーション医学の必要性,重要性について問いかけてみると,必ず優等性的な返事が得られる,しかし,現実の患者を前にすると,まず薬・手術が先行してしまい,リハビリテーション・プログラムの一環としてそれらがあるのを忘れ去ったような顔をし易いものである.リハビリテーション関係者はこれまで口を酸っばくして説明し,医療関係の教育体系の不備を改めるべく努力してきたが,残念ながらそれ程に実効は挙っていない.「水を飲みたがらない馬に水を与えるのは難しい」といった嘆きを良く耳にする.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.