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はじめに
心臓リハビリテーション(以下,心臓リハ)は,かつては離床とデコンディショニング予防が主たる目的であったが,急性期における再灌流療法やCCUの普及,冠動脈バイパス術の進歩により早期離床・早期退院が可能となった.そのため危険因子是正による二次予防(再発予防)や予後改善へ向けた心臓リハへと目的が変わってきている.アメリカ国立公衆衛生院は,心臓リハの定義を以下のように述べている.つまり,「心臓リハビリテーションサービスは,医学的な評価,処方された運動,心危険因子の改善,教育とカウンセリングを含む包括的かつ長期的なプログラムである.これらのプログラムは,心臓病の生理学的心理学的影響を抑制し,突然死や再梗塞のリスクを軽減し,心疾患に伴う症状をコントロールし,動脈硬化の過程を安定もしくは退縮させ,対象とされる患者に対して心理社会的,職業的状態を高めるように計画されたものである.」としている1).このように考えると,心臓リハは単に運動療法のみを行っていれば事足りるものではなく,食事療法や禁煙指導を含めた包括的(Comprehensive)リハを目指すべきであると考える.この目的を達成するためには,医療専門職がチームワークで対処していかねばならない.さらに,患者のセルフコントロール支援のためには長期的な関与が求められている.急性期や回復期のみならず,維持期を含めた心臓リハシステムの構築が必要である.この場合心臓リハに関する知識を職種間で共有することが望ましく,日本心臓リハ学会では2000年より心臓リハ指導士認定制度を発足した.現在までに1,000名を超える指導士が誕生している.
心臓リハの効果としては,全死亡を約20%改善する効果がメタ分析で確認されており2~4),さらに血管内皮機能改善5),自律神経機能改善6),抗炎症作用7),抗酸化作用8)など分子生物学的機序にせまる報告が相次いで出されている.
一方,治療法の進歩は高齢患者や重症心不全患者の生存を可能とし,今後は合併症を有する高齢心不全患者に対する心臓リハの重要性が増してくると考えられる.これらの患者の心臓リハのゴールは,職業復帰や活動的な日常活動を送るということよりも,症状を軽減し身体機能を改善することにより,不安を解消し自信を獲得し(QOLの向上),日常生活活動の介護量を軽減して症状悪化による再入院を減らすということが目標となる.
2006年度の診療報酬改定によりリハ領域が大きく変化し,心疾患リハ料の替わりに心大血管リハ料が新設され,他のリハ関連疾患と同列に扱われることとなった.算定可能な疾患も急性心筋梗塞,狭心症,開心術後に加え,大血管疾患(大動脈解離,解離性大動脈瘤,大血管術後)と慢性心不全ならびに閉塞性動脈硬化症が対象となった.本稿では,当科が行っている心臓リハの実際とわが国における心臓リハの課題について報告する.
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