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はじめに
脳卒中の発症率,死亡率,致死率の厳密な大規模調査として,日本では福岡県久山町,秋田県井川町の調査がある.その調査によれば,井川町では,69歳以下の脳梗塞発症率は近年減少しているが,70歳以上では減少していない.久山町では,脳梗塞・脳出血ともに1960年代に比べて1970年代は発症率が減少するが,1980年代では減少の割合が鈍化し,脳梗塞発症率はむしろ増加する傾向がみられた1).欧米での研究では,1980年代にはいって脳梗塞発症率の減少の割合がむしろ増加する傾向がみられている2).いずれにしろ脳卒中死亡率は減少しており,それは,救急医療体制など医療へのアクセシビリティの進歩,急性期医療技術の進歩また急性期リハビリテーションの整備が関係していることは間違いない.
障害を抱えながら長期間にわたり地域で生きてゆく人々が急速に増えている.厚生省は維持期のリハビリテーションを以下のように位置づけている.「維持期のリハビリテーションは,ADL・QOLの両面でほぼ目標が達成され,リハビリテーション的な疾患管理,リスク管理の必要性がほとんどなくなった時期である.」3)しかし,実際には,維持期は加齢や廃用による機能低下という問題に対峙し,かつQOLを維持向上させるための取り組みが必要な時期である.
障害を持って地域に生活する人々の機能をいかに維持・向上させ,障害者の人間的復権を進めるかは今後大事なテーマとなる.これまで,リハビリテーション専門医は,どちらかというと急性期のリハビリテーションに専門性を見いだしてきており,維持期については,福祉にその主役を譲っている感があるが,今後は,両者の連携がますます重要になってくるであろう.
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