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Ⅰ.はじめに
進行性筋ジストロフィー症は,いわゆる神経難病のうちでは最も重篤のものの一つであり,的確な治療方法のないために,従来診断まででその後の管理についてはあまりおこなわれていなかった.しかし,最近わが国では進行性筋ジストロフィー症に対するリハビリテーションが関心をもたれ始め,ある程度おこなわれるようになり,一部には欧米より進んでいる点もみられる.これは昭和39年度より厚生省が国立療養所に進行性筋ジストロフィー症患者のベッドを設け,多数の患者の長期の管理がおこなわれ,また,これと平行して,治療費の補助及び可成りの研究費が投下されてきたためである.このためDuchenne型進行性筋ジストロフィー症は,従来の教科書では20歳までに死亡すると書かれているが,現在では国立療養所に入院している患者のうち,20歳をこえたDuchenne型進行性筋ジストロフィー症の患者が可成り増加してきている.このことは入院により合併症の管理が適切におこなわれるために患者の多くがDuchenne型進行性筋ジストロフィー症の本来の寿命に近づいているという人もある.また,欧米においても死亡年齢には同様の傾向がみられる.
進行性筋ジストロフィー症の研究は,最近内外に膨大な発表がおこなわれているが,現在なおその原因は明らかでない.しかし,近年,従来のprimary degenerative process of muscle という説から離れて,新しく血管説vascular theoly,神経説neurogenic theoryが提唱され,これらを裏づけようとする精力的な発表がおこなわれている.
そこで,この進行性筋ジストロフィー症の病態生理を病因論を中心に述べ,更にリハビリテーションの際問題になる心肺の異常,および,遣伝相談に必要な遺伝についての最近の知見についてまとめてみることにしたい.
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