Japanese
English
特集 リハビリテーション医学の基礎―正常生理と病態生理
Ⅳ.各種疾患の病態生理
脊髄損傷の発症機序
Mechanism of Spinal Cord Injury.
博田 節夫
1
Setsuo Hakata
1
1国立大阪南病院理学診療科
1Department of Physical Medicine, National Osaka Minami Hospital.
キーワード:
脊髄損傷
,
挫傷
Keyword:
脊髄損傷
,
挫傷
pp.1057-1065
発行日 1977年12月10日
Published Date 1977/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103907
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はじめに
治療医学およびリハビリテーション医学の進歩は脊髄損傷患者の延命効果をもたらしたが,麻痺により行動を制限されたうえ尿路障害,褥創などの障害に対する悩みもまた長期化することとなった.脊髄損傷のリハビリテーションにたずさわるものにとっても悩みは大きく,神経症状を改善し,いくらかでも残存機能が増大することを願わないものはないであろう.過去30年にわたり幾多の研究がなされているとはいえ,現在なおその発症のmechanismは解明されていない.
治療法に関しても保存的療法から積極的な手術的療法に至るまで,統一された見解がないことは,その複雑さを物語っている.鈍力による外傷において,骨損傷の有無が神経症状の程度と関係ないことや,手術所見で外見上脊髄に異常をみないものでも高度の麻痺を伴うことなどは古くから知られており,また,受傷から麻痺症状が固定するまでに時間的なずれのみられるものがあることから,脊髄内部において特殊な変化が起こっていると推察される.病理解剖的にみた損傷脊髄の所見はこの変化が完成した後のもので,神経症状との対比には役立つとしても,その過程を知ることはできず,したがって,初期治療を大きく変えうるものではない.
近年,この方面における動物実験の成果にはみるべきものが多く,脊髄内での壊死や空洞の発生過程,norepinephrineとの関係などから発症予防の可能性に光明が見出されている.これらに関して文献的なまとめを中心に述べてみたいと思う.
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