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はじめに
虚血性心疾患の診断における冠状動脈造影法の重要性は改めて述べる必要はないと思うが1~3),実際に患者の診療に当ってこの検査の適応をいかに定め,また得られた結果をいかに役立てて行くかという問題になると必ずしも明確でなく,医師の間でも意見が一致していないようである.いかなる疾患においても正確な診断,すなわち確定診断を基にして適確な治療を行なうことが理想なわけであるが,その意味では虚血性心疾患の診断における冠動脈造影法(常に左心室造影法を組合せる)は,全ての心疾患の診断法の中で最も直接的で病態を具体的に把握できるものはないといえるであろう.他の心疾患においては,観血的検査法である心カテーテル・造影法はほとんどの場合に手術治療を前提として行うわけであるが,虚血性心疾患の場合は外科的治療の選定には絶対不可欠であるのみならず,内科的治療を前提とする場合においても治療内容の選定,リハビリテーションの指示に当ってその有用性は高く,さらに器質的冠動脈病変を持たないいわゆる機能的狭心症あるいは心筋自体に問題のある心筋症の診断,冠不全との鑑別においてもこの検査法なくしては到底正確な結論を下すことはできない3,4)といっても過言ではない(表1).特に狭心症,心筋硬塞の予後を左右する重大な因子である副側血行の有無,良悪を把握する手段として,また左心室心筋の収縮状態を具体的に知る方法として冠動脈・左心室映画造影法の意義は大きい.
以上の理由より考えると,この検査法は虚血性心疾患あるいは心筋症を疑う全ての患者に施行すべきものでその適応は極めて広いようにも思われるが,現実においては検査の技能,内容のレベルが病院によって大きな差を生じ,また本来安全で優れた内容の検査であるべきものが,危険をはらみ,得られた結果も極めて不明瞭なものでしかない場合が多々存在するのを否定出来ないのである3,5).
しかしここでは,診断に十分役立つ優れた水準の検査を行ったことを前提として,本特集のテーマであるリハビリテーション,特に冠不全のリハビリテーションと冠動脈造影法について考察してみることにする.
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