Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
日頃,他の病院では治療の限界にある重度の患者の治療を担当し,また,更生相談所にて医学的判定と施設入所判定にあたっている医師にとって,もっとも問題となるのは,最終のゴールをどの線におき,能力的にみていかに積極的に社会参加をさせ,生きがいを見出させるかである.結局は,授産施設を含めた職業リハ体系のなかでの選択が決め手となる.このリハ過程のなかでの身体的機能回復訓練,家族と職場の上司との関連,住宅および職場環境の整備,スポーツ,自動車運転免許の獲得等すべての過程は,この最終のゴールをいかに有利にすすめ,精神的にも経済的にももっとも残存能力を生かした形での社会参加をすすめるための補助手段にすぎない.極論すれば,私の本分である外科的治療もその過程の一つにすぎない.それだけに,この最終的な職業リハ体系が,障害者本位のサービスになっているか否かがもっとも重要な鍵となっている.
今回,私に与えられたテーマは,医師の立場で外からみた授産施設のあり方を論議せよとの課題である.もとよりこの分野における実際面に関してはまったくの門外漢である筆者にとって授産施設のあり方を論ずる資格はないが,昭和35年から身体障害者更生相談所の窓口にいて,総合リハビリテーションセンター設立に微力をつくしてきた立場からの意見を述べてみたい.なお,授産施設については個々の専門の立場からくわしく述べられると思うので,兵庫リハセンターのように,厚生サイドにある相談所,授産施設,能力開発センターおよび指導所と,労働サイドにある職業訓練校,心身障害者職業センター(昭和51年建設中)をかかえ,これらの職業リハ施設を利用する障害者の方々に最大のサービス機能を発揮できるように苦慮している立場で,職業リハ体系のあり方を中心に私見を述べてみたい.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.