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はじめに
わが国で一般の職場に雇用されることの困難な重度障害者に対して,曲形にも就労の場を提供してきたのは福祉工場および各種の授産施設等であるが,欧米諸国でそれらに匹敵するものとしては,ワークショップおよび作業活動センター(またはディ・ケア・センター)等がある.
たとえば,ヨーロッパでは一般労働者にくらべ1/3以上の作業能力がある重度障害者は雇用の対象と考えられ,各種の雇用促進対策を講じても一般の職場に就職できない場合には,国および地方自治体が一般の職揚にかわる雇用保障の場を提供している.これが「保護雇用制度」であり,ワークショップはその一環として位置づけられている.
それに対し,作業活動センターはワークショップから賃金を目的とした作業という概念を除外して,重点を雇用の可能性の乏しい重度障害者の生活を充実させる諸活動の提供においた社会福祉施設である.
授産施設とワークショップの基本的な相違は,前者がある程度作業能力がある障害者への作業訓練および就労の場の提供という職業的サービス機関としての側面と,作業能力がきわめて限られた重度障害者への簡易作業を中心とした作業活動プログラムならびに一般の住宅にかわる生活の場の提供という社会福祉サービス機関としての側面をあわせもっているのに対し,後者はあくまで職業を中心とした機関であるということである.このことは,たとえばアメリカのワークショップの場合,利用者の80%は一般住宅で生活(60%は家族と同居,20%は単身世帯),残りの20%は病院および他施設から通所している1)という事実からも明らかであろう.
授産施設の一種と位置づけられている福祉工場の場合,運営費に対し一部補助が出ているとはいえ,工場部門については独立採算が原則であり,雇用対象者を相当程度作業能力があるものに限定しない限りは経営的に成り立たないようになっている.したがって,何らかの形の賃金補助を前提としたワークショップとでは対象者の範囲は自ずと異ならざるを得ないであろう.
前述したことから,一般就職が困難な人々に一般の職場にかわる就労の場を提供するという点では福祉工場,授産施設とワークショップは類似していながらも,役割上はかなりの差があることが理解できよう.
以下では,わが国における重度障害者の就労の場とのこうした相違をふまえながら,欧米諸国における重度障害者の就労プログラムの現状をワークショップを中心に紹介することにしたい.
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