巻頭言
脳性麻痺を考える
江口 壽榮夫
1
1高知県立子鹿園
pp.443-444
発行日 1976年6月10日
Published Date 1976/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103562
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脳性麻痺の早期発見・早期訓練などの医療面から,教育・職業に関するまでのリハビリテーション,さらに重症児に関する問題など,この「総合リハビリテーション」でも重点を置いた取り扱いをしてきていることは,関心を持つ者にとっては,真に喜ばしいことである.しかし,それだけ解決すべき問題が多いので,度々誌面を占めるということでもあるといえる.
四肢切断・脊髄損傷・卒中後の片麻痺など,主に後天的に障害者となり,しかも社会で活動し健康であった人々のリハビリテーションは,未だ多くの問題をかかえてはいるが,リハビリテーションに関連する医学の発達と社会的な受け入れ体制の整備,特に職業の専門化・分業化で障害者の残存した能力に適した職業が見つけやすくなり,また,日本における高度成長と福祉についての社会的関心と理解,そう願いたいのであるが,共に社会に生活していて障害者となった者の社会復帰を,平等の立場で願う社会の人々の人間性の発露により,もちろん障害者の社会復帰への意欲は不可欠であるが,一応欧米のレベルに一歩ずつ近づきつつあることは事実である.そして,脳性麻痺についてもそうであると信じたい.さて,障害者,特に重度の障害者の問題は,よくジャーナリズムでも問題視され,その中でも脳性麻痺が,頸損後の四肢麻痺などよりも,より頻度高く取り上げられていると思うが,その取り扱い方が単に同情をひくだけで,障害者を感覚的にとらえた人々の側からの代弁だと思われるものもあると感じるのは私だけであろうか.
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