Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.はじめに
脳性麻痺(以下CPと略す)の早期訓練については,すでに誰も異論がなく,その治療は運動発達の正常化を目指すべきであることはいうまでもない.これらの対象児は,肢体不自由児施設や通園センターにおいては,母子入園あるいは通園訓練により,CP児に毎日接して介護している保護者(一般的には母親であるが)にCP児の取り扱い,訓練の仕方を教え,定期的なチェックの下,漸次,幼児としての応用機能を知的発達とも絡めて,正常児の機能へ近づくように努力が払われる.そして,神経生理学的アプローチによる訓練が一番必要とされる時期でもある.
さて,肢体不自由児施設に在園しているCP児の占める割合は,ほとんどの施設で60~70%,あるいはそれ以上であり,その大部分は学童期であり,肢体不自由児養護学校の生徒でもある.治療と教育,すなわち療育が必要だからであるが,この養護学校は小学部6年間,中学部3年間で,一般正常児と同じように合計9年間の在学の保障が与えられていて,最近ではさらに上級の高等部3年間を設置している所も多い.このような学童期におけるCP児は,かつては,初めて入園するまではまったく治療を受けていなく,放置されていて,訓練をはじめ,整形外科的に手術や装具などの適用が見出されて,入園することが多かったのであるが,最近では上述のごとく,母子入園あるいは通園の経験を経てから,引き続き単独入園してくる者が次第に増加してきている.それだけCPの一貫した治療の重要性が社会的にも認識され,患者の早期発見・訓練と相俟って効果があがってきていることは喜ばしいことである.一方,これに関して,教育面での幼稚部の設置の望まれることにもなる.
しかし,訓練した経験があろうとも,学童期CPの程度,種類は様々であり,これらは脳損傷の範囲,場所などにより異なるのは当然であり,しかも,小・中・高等学校の年齢層に進むに従い,知的,心理的,情緒的,社会的な面の発展に応じて,障害をできるだけ正確に把握し,今後の指針を考えるためには,多くの専門家が必要となる.そのために,肢体不自由児施設においては,医師,看護婦,PT,OT,STなどのメディカルスタッフの他に,教育者(養護学校の先生),心理学者,児童指導員,保母,さらにはMSWといったスタッフがいる.これは,健常の学童児を考えても,現在の社会機構において,家族単位のみでは十分な社会人に育てられないことと同じであり,まして肢体不自由を持ち,他にも脳損傷に伴う合併症があり,しかも家庭から離れて単独で入院している学童となると,問題はもっと複雑になるわけで,当然,いろいろの専門家の働きが結集されないといけない.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.