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はじめに
近年は,医療全般に根拠のある医療(evidence based medicine:EBM)への関心が高まり,医療の効果についての質的検討が始まっている.その流れは小児リハビリテーション領域にも及んでいる.
脳性麻痺に対する運動療法には様々な介入があるものの長期的成績についての十分な検討はなされておらず,介入効果についてのエビデンスは乏しい.神経発達学的治療(neurodevelopmental treatment:NDT)は,広く世界中で神経学的運動障害のある小児や成人の脳性麻痺や頭部外傷などに適用されている.このNDTの効果についての検討も少ない.その理由として,子ども側の要因としては中枢神経系の傷害の程度に起因する障害の重障度と合併症,加齢に伴う二次的傷害の多様性が挙げられる.セラピスト側の要因としては介入に関する質的・量的問題があり,環境的な要因としては家庭環境,教育環境,社会的環境などがあり,これらが絡み合って問題の所在を複雑にしている.また,これらの問題に対応できる研究体制の不備がある.加えて,脳性麻痺児の運動機能の変化を捉える客観的な評価尺度についての十分な検討がなされていなかったことも挙げられる.
このような社会情勢の変化および脳性麻痺に特有の要因を考慮し,脳性麻痺の運動療法に一定の方向性を与えるガイドラインとして,「脳性麻痺リハビリテーションガイドライン(以下,ガイドライン)」が刊行された.このガイドラインでは,現段階でエビデンスに基づいた治療がどこまで可能なのかを明らかにしている1).
本稿ではガイドラインを基に,NDTの推奨段階決定の根拠になった最終の採択論文について,その概要を紹介し,NDTに関するエビデンスについて若干の検討を加えることとする.
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