Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
リハビリテーション医学が志向しているところは,狭義の医学的な症状や愁訴の改善だけでなく,患者が抱えている機能的問題,精神心理的問題,社会的問題など,いわば全人間的な問題点の解決ないし改善である.したがって,脳血管障害(以下CVDと略記)患者のリハビリテーション(以下リハと略記)を始めるには,狭義の医学的評価のほかに,上記の多面的な評価が必要である.主治医は,患者に関するこれらの諸清報をふまえて,リハのプログラミングや診療にあたることが肝要であり,担当する看護婦,PT,OT,ST,MSWも,患者の問題点を的確につかんで,それぞれの業務を行わねばならない.そのためには,Weedが提唱し,日野原1)によってわが国に紹介された,問題志向システム(Problem Oriented System,POS)によるカルテ(PO medicalrecord)が非常に有用であることを強調しておきたい.
さて,筆者に与えられたテーマは,患者に接する最初の作業である.病歴をとることについてである.一般に,病歴は家族歴(family history),既往歴(past history),現病歴(history of the present mllnesscss)から成るが,そのほかに,職業歴,学歴,結婚歴などを含む,いわゆる“患者の背景(patient profile)”が病歴の中に加えられるべきであることは,前述の多面的評価の必要性から首肯されるであろう.
CVDの病歴をとる目的は,患者の過去から現在までの疾患とその背景に関する必要な情報を得ることにある.その情報に基づいて,診察や機能評価や検査が行われ,そこで初めてリハ・プログラムが作られる.したがって,病歴の持つ役割は非常に大きいと言ってよいであろう.「よい診断,よい治療には,よい病歴が必要である」ということは,臨床の諸先輩が常に強調してきたことであるが,ともすれば,病歴が等閑にされる傾向はないであろうか.
以下,リハのために入院してくるCVDの病歴のとり方について述べる.対象には,発病後間もない患者も,かなりの年月を経過した患者も,その間に他の施設でリハを受けたことのある患者も含める.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.