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はじめに
本邦におけるリハビリテーション医学の学会が初めて開催されてからすでに10年以上が経過した.リハビリテーション医学の水準も上昇し,また今さらリハビリテーションという言葉が聞きなれない言葉であるという医師もほとんどいなくなった.年々リハビリテーション医学会も盛大となり,学会への入会者も増加しているといわれる.これで良いのだと考えられぬことはない.しかしリハビリテーション医学の本質を考えるとき,また大病院,医科大学の中におけるリハビリテーション医学の位置づけを考えるとき,このまま手放しで満足出来るであろうか.これからは,米国をはじめ諸外国のリハビリテーション医学の現状を冷静にかつ正確に捉らえ,諸外国の模倣ではない本邦独自の土壌に適合したリハビリテーション医学を育てるにはどうすべきか真剣に考えなければならないのではなかろうか.2,3の新しい医科大学を除けばほとんどの医科大学,ことに国立大学医学部にはリハビリテーション医学の講座はなく,また設置するための積極的な動きは少ない.多くのリハビリテーション医学の進歩に貢献している人々は,我々の大先輩も含めて何らかの以前からの,別の範疇の臨床医学を専攻しそれを背骨として活動しているか,または現在も同時に両方をその専門分野として扱ういわば片足ずつ2つの専門分野に足を突込んで仕事をしているのである.リハビリテーション医学のみを専攻し,その学問的基盤のみに頼ってしかも勇気を持ってこの分野に取り組んでいる者はきわめて少なく,例外的である.そしてその人達の多くは,米国をはじめとする諸外国の学問の影響を強く受けているものである.こういう著者とても,整形外科とリハビリテーション医学を両立させて何とかやって行こうと考える者の1人であり,絶えず矛盾にも直面している.これでいいのだろうか?
このような状態で日本のリハビリテーション医学の将来はどのように学問としての位置付けを得るのであろうか? 整形外科医としての立場からいえば,天児民和先生が昭和50年度の東日本臨床整形外科学会でリハビリテーション医学についての特別講演を行いその重要性を述べた.また米国でも,後述するが,Lipscombなどの大御所が整形外科学の将来の議論の中でリハビリテーション医学の整形外科医に対する重要性を強調したりする.これらはまったく納得の行くように思われる.しかしリハビリテーション医学というものは本当に独立した専門科目になり得ないのだろうか? このようなことを考えつつ,以下私見を述べてみたい.理学療法士と同じことをやるようなリハビリテーション医学専門医ならば職業のspecialityから考えて不用であろうし,どのような専門医を作るべきかということは深刻な問題となるであろう.
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