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私は,学生時代,神経学に興味を持っていた.ハンマー,筆,etc.小道具のみで,神秘的な神経機構が解明され,理路整然と診断が下されてゆくのは,シャーロックホームズが靴底をみて,事件を解決していくのに似ていた.卒業し研修医時代は,無床診療所で内科の研修をした.生活や労働の場にいる人が,まずその健康を気づかい,最初に飛び込む所が,地域の小診療所であった.ここでは,とにかく寝たきり老人の多いのに驚いた.脳卒中は絶対安静の迷信が徹底していた.「なおるでしょうか?」という家族の問いに,多くの横文字のサインは,まるで意味がなかった.あの魅力的な神経学は現場では,高嶺の花であり,academic,static and diagnostic neurologyとしての役割でしかなかった.患者に必要なものは,practical,dynamic and therapeutic neurologyであった.こんな時,リハ医学のneuro-Physiological approachは,暗闇の中の光的存在に私には思われた.
学生時代,BrunnstromやBobathなどは,まったく聞いたこともなく,また,神経内科の大先輩もそれにはほとんど関心がなかったと思われる.こんな頃から,若手リハのメンバーを知り,時々上京するようになった.関東地方での活発なリハ活動を見るにつけ,名古屋地域での横の関連の乏しさが目についてきた.しかし,すぐに離郷できず,地方でリハを手がけようとした.研修医を終え,まずは国立病院で神経内科の勉強をはじめた.2年間の神経学習得は非常に勉強になった.①診断学として,神経サインの取り方,CAG・PEG・EMG・MNCV・Myelo-scanning,②疾患としては,CVA・脳腫瘍・MND・脱髄疾患・末梢神経炎・筋炎・CP・PMD,etc.③治療法として,薬物療法・神経ブロック・下肢装具・片麻痺のPT,etc.こうして神経学を勉強したが,特にCPをみていると,足部変形,scissor's hip,膝屈曲拘縮に対して,PTだけでなく積極的に手術をすることが必要な症例に遭遇した.リハ医としては,整形外科的手段を有することが望ましいのではないかという気持になってきた.そして現在の中部労災病院整形外科に入局した.
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