書評
スポーツ医学を志す君たちへ
田中 康仁
1
1奈良県立医科大学・整形外科
pp.1289
発行日 2021年10月25日
Published Date 2021/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202164
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本書は,わが国における現代スポーツ医学の創始者のお一人である武藤芳照先生の記念すべき著作100冊目の,まさに入魂の一冊であります.先生の人生がこの本に凝縮されており,わが国におけるスポーツ医学のはじまりと,これまでの発展の経緯が手に取るようにわかります.さらにスポーツ医学にとどまらず,人生で新しいことを創造するためには,どのようなアプローチで,どう行動すればよいか,仲間づくりはどうするか,これらの疑問に対する具体的な回答までもが明快に記載されており,「無」からスポーツ医学という領域を確立された著者でなければ書けない内容が,ぎっしり満載されています.特に若い方々が将来について思案され,進むべき道に迷っておられるときには,きっと進路を照らすヒントを見つけることができることでしょう.
武藤先生がスポーツ医学を志されたころは,試合や練習中の給水の禁止など,今では考えられないことが堂々と行われておりました.先生は「予防に勝る治療はない」という信念から,日本のスポーツ界における誤った指導法を医学的に次々検証され,抜本的に変えていかれました.先生のスポーツ医学への入り口は水泳でありますが,そこから本書に詳述されておりますように壮大な領域に展開してこられました.先生が見てこられた対象は子どもから高齢者に及び,元気な子どもたちを育てるということは究極の介護予防であると述べられております.また,転倒は生活習慣病であると述べられており,超高齢社会の問題点を解決するためにスポーツ医学が役立つことがよくわかります.
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