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はじめに
リハビリテーション・プログラムを推し進めていく上で,最終的に問題となるのは,常に“モチベーション”である.どんなに高度の技術が進み,どんなにすばらしいスタッフが揃っても,障害者自身にそれを利用しようという気持がなければ,何の価値もないものとなる.
この点が,一般の医師と患者の関係と異なるところであろう.一般に患者が病院を訪れる時には,何らかの自覚症状があり,それを取り除いてもらうことを希望する.これに対して,医師はその専門的知識・技術によって,その悪い箇所を治療するのである.そこには,患者自身の働きかけがなされなくても治療の完了する場合が多い.いや医師と患者との関係はそんな単純なものではないとの反論もあるだろう.しかし,そこには医学的体系という柱がはっきりと存在していて,患者はそれに身を任せることだけが期待されているというのは過言であろうか.
ではリハビリテーション体系という柱は存在しないのかという疑問が生まれるだろう.柱は存在している.ただ,患者はそれに身を任せるだけでは足りないのである.そこに自らの主体的な力を加えない限り,前へは進まない.リハビリテーションという車のアクセルを踏むのは障害者自身なのである.
ところで,その主体的働きかけの原動力となる“モチベーション”に関して,Young,P.T. は“行動を生起させ,生起された行動を維持し,一定の方向に導いていくという全過程のことである”と定義する.その考えに基づき,この稿では,最近兵庫県リハビリテーションセンターで見られる,女性上肢切断者の能動義手に対する意欲的な取り組みへの動きに焦点をあてながら,リハビリテーションという場面の中でのモチベーションの働きやその要因について考察していきたい.
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