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はじめに
情緒障害と行動異常には,明確な違いがあるわけではない.これらのことばは医学的に使用されるよりも,こども(または大人)を取り扱うさまざまな職種の人の間で使用される社会的なことばである.ニュアンスの上からは情緒障害は障害されているこころを,行動異常は問題となる行動自体を指すように思われるが,実際に使用している状況にはほとんど差異がないように思われる.最初にこどもの情緒障害または行動異常を考えるにあたって念頭におかなければならないことを2つ指摘したい.
(1)行動はそれを行う個人の問題であるだけではなく,そのとりまく環境とのからみ合いである.こどもは周囲に敏感に反応して行動する.一方,同じ行動でもそれを許容しうる社会と許容できずに異常行動として受けとめてしまう社会とがある.施設における問題児がむしろ正常児と考えられる場合があることはどなたも経験しておられるだろう.
(2)情緒は発達するもので年齢とともに,精神発達と並行して変化していくものである.後述するように,精神発達と情緒発達が並行しないことが問題となる情緒障害のタイプもあるが,こどもの行動はそれだけをみて判断することをせず,いつも発達という縦のつながりを考えることが必要である.
こどもの情緒発達をどのようにとらえるか1)はきわめて大きな問題で,到底ここで論じるわけにはいかない.ここでは3ヵ月に人の顔をみて笑うようになる(Spitzのいう3ヵ月微笑),8ヵ月に人見知りが始まる(8ヵ月不安,もう少し早い場合が多い),1歳半から2歳にかけて大人への愛情とこどもへの愛情が分化してきて,次第にこども同志の遊びが育っていくというごく大まかな目やすを示しておく.
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