Japanese
English
特集 心理的アプローチ
脳障害と情緒障害―大脳半球機能分化と情緒統御をめぐって
Brain Damage and Mood Disorders: from the Angle of Moode Control by Hemisphere Specialization.
佐藤 能史
1
Yoshifumi Satoh
1
1京都府立洛東病院理学診療科
1Department of Rehabilitation, Kyoto Prefectural Rakutoh Hospital.
キーワード:
脳障害
,
情緒障害
,
大脳半球機能分化
Keyword:
脳障害
,
情緒障害
,
大脳半球機能分化
pp.775-782
発行日 1984年10月10日
Published Date 1984/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105261
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はじめに
身体障害のリハビリテーション治療の際に心理的諸問題が生じ,これに対する治療者側の認識が重要な問題となることは今日広く知られている.脳損傷の場合には,認知機能の障害がこれに加わり,また脳損傷それ自体が障害者の心理状態に影響を与えていることもあり問題は複雑となる.とくに近年,右大脳半球損傷例において,劣位半球症候群とそれに付随しておきることの多い情緒意欲面の障害が,いわゆるリハビリテーション阻害因子として問題になっている.
本稿では,左または右の大脳半球損傷が主として情緒面においてどのような影響をおよぼすものであるかを,臨床的研究の数多い業績の中から主要なものを選んで紹介したい.
ヒトの大脳半球の機能分化に関する研究はSperry,Gazzaniga1),Geschwind2)などの脳梁切断(split brain)とdisconnection syndrome学説により進められたが,これらの説は最終的には,左右別々の機能を営む二つの脳がいかにして一つの人格に統合されるかを問題としている.
情動の問題も,左側の言語機能による意識化の問題を抜きに本来考えられない問題である.現在のところ,脳損傷者の心理について統一的見解や有効な対策を探求中のわれわれも,情動面の障害について学びつつ,常に統合としての人間像のことを頭に描くことを忘れてはならぬと思われる.
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