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緒言
脳性麻痺児のギプス・装具による変形矯正あるいは歩行改善といった試みは日本でも古くからなされている.しかし痙性の抑制という観点でギプス・装具療法がなされた報告は皆無に等しい.海外ではBobathの反射抑制肢位(Reflex inhibiting posture)の概念の普及もあり,1960年代より痙性抑制のためのギプス・装具(Inhibitive or tone-reducing casts & splints)の発想がみられるようになった,Wilsonら23)はギプスシーネを用い,またTe Groenら22)はギプスキャストを用いて,脳性麻痺児の足関節を0°に固定して痙性抑制を試みた.彼らは痙性により過活動的(overactive)となった下腿三頭筋は固定することによって,疲弊(tire-out)に陥り,足関節の筋バランスの改善が得られると考えた.
1970年代に入ってCraigら4)は足趾を背屈することが下肢痙性抑制に役立つことを経験的に見出し,舟底状(rocker-bottom)の“Forest Town Boot”を考案した.そして下腿三頭筋同様,長趾屈筋の伸張による同筋の痙性抑制の結果と考察した,またYatesらは足趾の背屈に加え,Duncanらの“Tonic Foot Reflexes”7)の研究結果をもとに中足骨骨頭部・踵部の除圧が異常反射を抑えることに注目した.それを応用するための技術として足底板を用い,それに凹凸を施して(図1)からギプスキャストをすること,また脱着の簡便さを考慮して,キャストをカットしたシャーレ(Bivalved casts)(図2)を紹介した.これらの技術はSussman,Cusickら5,19,20)により完成され,安価でできることもあってBobath法に付随するテクニックとしてPT,OTを通して米国内で普及した.
1980年代にはCusickらの報告5)のようにプラスチック製の抑制下肢装具(Inhibitive AFO & FO)も出現し,長期の使用に耐えうることから更に適応が拡げられた,米国内では多くの臨床経験がつまれ,適応も徐々に明確にされてきたが,臨床面での普及に比べて有効性についての理論的裏付けなどはまだ不充分で今後さらに研究を要するといえよう.
今回我々は特に抑制下肢装具につき一部修正を加え試みた結果,満足する効果が得られた.本論文ではこの装具が応用されるに至った背景を神経生理学的に考察するとともに我々の症例を紹介する.
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