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はじめに
固縮,強剛rigidityは筋トーヌスの亢進とくに屈筋および伸筋ともに亢進した状態であり,被動に際し抵抗は一様であり,運動の速度や方向による変化がみられない.臨床的にたとえばパーキンソニズムを代表的疾患としてもっとも理解しやすいが,脳血管障害,脳腫瘍,脳炎症,代謝あるいは中毒性疾患,その他の変性疾患でも障害部位によっては固縮を示してくることになる.
さて,固縮と筋紡錘・γ系との関連,固縮に対する薬物療法とその作用機序についても古くから検討されているが,パーキンソニズムの場合,楢林らも指摘するごとく,外眼筋・舌・内喉頭筋などには単位体積当りの神経筋終板の数は他の骨格筋に比しきわめて多いにかかわらず筋紡錘の存在すら疑わしく,しかも固縮類似症状を示し治療で軽快する事実や,無動akinesiaと固縮との関連で両者はまったく別個の発症機序が考えられるのにl-DOPAで軽快するなど生理薬理学的諸問題が多く残されている.
パーキンソニズムに対するl-DOPAの画期的効果は,従来の抗副交感神経剤を主体とした本症の治療に一大転換をもたらしたものとしてここ数年間の話題をさらった.l-DOPAは本症に対する投与量,投与方法,副作用の検討および防止法,さらにはl-DOPA減量に関連して脱炭酸酵素阻害剤や精神賦活剤の併用,l-DOPA自体の改良へと発展的研究がすすめられている.
また,たまたまパーキンソニズム患者にA2型インフルエンザ感染予防として抗ウイルス剤amantadine hydrochlorideを投与したところ,著明な改善がみられ,一躍抗パーキンソン剤として取り上げられるに至った.本剤もl-DOPAに近い作用がみられ,またl-DOPAと併用することにより両者の用量を著しく減少せしめうる.
本稿ではl-DOPA.amantadineを重点に述べ,副交感神経遮断剤その他については略記するにとどめる.
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