- 有料閲覧
- 文献概要
リハビリテーションを総合的にとらえるという意味では,リハビリテーション医学はその中のある部分をしめている,つまり分担しているということになるのであろう.ただしリハビリテーション医学というものは他の臨床医学のように特有の具体的治療法をもち合わせないのに,なお治療学の中に入るとも考えられている.もし具体的治療法を明確にもつと,ほとんど他の治療医学のそれとオーバー・ラップするが,治療法を他の医学にまかせてもその存在意義は大きい.少なくとも多くの他の治療医学がリハビリテーションの指向を新しくとり入れるか,または再認識し軌道を修正して,さらに大きく発展する影響をうけてきている,今リハビリテーション医学が他の治療学と同様に分化の道を辿るとすれば,上記のような他科への影響を及ぼす可能性を残しながら,整形外科学,内科学の一部,その他に基礎をおいて理学療法,作業療法などを応用する機能回復学になるか,またはそのような一分野の医学と社会学的な人文科学の組合わせとなってゆく可能性もある.
いずれにしても,医学以外にリハビリテーションの分野で仕事を成しうる能力のあるグループは多いが,いま治療という意味で理学療法を1例として考えてみるとする.理学療法はリハ医学から大きな影響をうけながら育っている治療法であるが,そのバック・グラウンドに治療学を形成してゆく基盤をもちにくいようになっている.その治療根拠の実証法や新しい開発に関するデータ再現性の弱さは,よって立つ理論の部分をリハ医学が肩代りしてきただけではなく,基礎学を決め得ないで歴史的に経験にたよる方法が根づよいからではなかろうか,その技術が評価されるだけに,実証方法を確立することが将来とも問題として残ってこよう.他の科学体系の中から奪いとってくるものはありうる.もっとも医療のなかで臨床医学そのものが科学体系の中に入っていないという考え方があって,治療法も同様に立証がむずかしいのであるが,医療の方は生化学,病理学などによるフィード・バックをうけやすい点があって治療学を形成しうると考えてもよい節がある.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.