巻頭言
「総合リハビリテーション」に思う
山口 淳
1
1大阪市立総合医療センターリハビリテーション科
pp.393
発行日 2009年5月10日
Published Date 2009/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101500
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かねてより「総合リハビリテーション」が気になっていた.本誌のこと(名称)ではない.近年よく用いられる業界用語としてのそれである.単なる「リハビリテーション」と何が異なるのか? わざわざ「総合」を冠に付すからには,それなりに理由があるのだろう.総合芸術,総合学習,総合格闘技,総合レジャービル「グラン○ャトー」など,広く頻用されている.
元来,リハビリテーションは総合的なものであり,便宜上,「医学的」や「教育的」などの分野別,さらに「呼吸器」や「脳血管疾患」などの臓器別,疾患別,「回復期」や「維持期」などの病期別に細分類されることはあっても,その究竟として,包括的で全人的な理念と,多元的かつ横断的な実践に帰結される.したがって,例えば,「運動器リハビリテーション」に限定した議論が展開され,「運動器不安定症」という概念が導入されると,本来のリハビリテーションは必然的に「総合リハビリテーション」へ格上げ(?)される.国際問題を論じる際,地球規模で捉えたほうが理解しやすいことはしばしば経験するが,これを太陽系や銀河系といった宇宙規模にまで話を拡大すると論点を見失う.歩行分析中にリハビリテーションマインド云々をもちだされても,逆にリハビリテーションの理念に関する議論中に非現実的だと開き直られても,ただ困惑するしかない.
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