身体障害者福祉法の歴史的背景―医師の立場から

はじめに

　身体障害者福祉法の歴史的背景（医師の立場から）について書くように，という御依頼であるが，すでに20数年を経た以前のことであって記憶もさだかではなく，また当時の資料も散逸してしまっていて，はなはだ心もとない．むしろ執筆を辞退すべきではないかとも考えたのであるが，再考するとこの法律の制定は恩師，故高木憲次先生の悲願とするところでもあった．それで，この法律制定前後における高木先生の動向を中心として筆をとるのならばあながち不可能ではなく，また私自身としても興味がないわけでもない，との旨を編集部にお伝えし，意向を伺ったところ，むしろ，そのところが狙いである，とのことであったので敢えてお引き受けした次第である．従って，以下の叙述はいきおい片寄った，しかも本題から逸脱したものとなりがちであろうことをあらかじめお断りしておく．