巻頭言
道ははるか
花田 ミキ
pp.613
発行日 1973年6月10日
Published Date 1973/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102951
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青森県のM村.保健婦のAさんが,老人家庭奉仕員といっしょに,ねたきり老人の家庭を訪問するところに行き合わせた私は,これさいわいとばかりに,願って同行した.途中で担当の民生委員ともおち合って,海辺の崖にしがみついているような家をたずねた.
世帯主は,全盲.先日まで漁師であったという.患者は4年ごし臥床しているその妻.子供たちは他郷に出て帰ってこない.臥床している妻は,左半身麻痺.村の医師は,薬もいらないし,まあねているより仕方がないといったそうだが,夫はできるだけのちえをしぼっていた.近くの畠から,とりのこした野菜をもらってきて,野菜の生ジュースをつくって,日に3度,それに加えて1日1度はニンニクのオロシものませていた.土間においてある古自転車は,ひろってきたという.
「ぬくくなったら,アレにのせて,足の運動をさせるのだ」と夫はいっていた.
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