連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・213
沖縄のはるか先島 魅惑されるヤマネコ・ファンタジー
柳田 邦男
pp.822-823
発行日 2024年9月10日
Published Date 2024/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686202762
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日本の本州からははるかに遠い,南西諸島の南端・西表島のジャングルに棲息するイリオモテヤマネコの強烈で魅惑的な表情を大きく表紙に描き出した絵本『ヤマピカリャー』を手にしたとき,私はこちらを見つめる眼球の鋭さに射すくめられて,しばらくの間,目をそらすことができなくなった。
両耳をしっかりと立てて,どんなかすかな音も聞き逃がすまいとしている緊迫感。鼻筋がきりっと締まっていて,威厳に満ちている。口をほんの少しだけ開けて,舌先をちょっとだけ出している。鼻下から両側に広がる真白い髭には威厳さえ感じられる。全身を覆う黒い斑点が野生を感じさせる。
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