書評
綿森淑子 監修・土本亜理子 著「純粋失読―書けるのに読めない」
江藤 文夫
1
1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
pp.264
発行日 2003年3月10日
Published Date 2003/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102689
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ある日突然,字が読めなくなる.目は見えているのに,書くことはできるのに,いま自分で書いたばかりの字が読めない.本書は,こうした特殊な文字言語の障害である純粋失読を生じた人々の困惑と回復への努力を精力的な取材活動によりまとめた現場報告と純粋失読に関する解説書である.
第1章では広島のO氏とその婦人による闘病記録に基づき,脳卒中の医療現場の様子と純粋失読の障害像が描かれ,この本の企画者でもある広島県立大学の綿森淑子氏によるO氏の言語に関するリハビリテーションの経過が解説されている.第2章では,O氏の障害の中核をなす純粋失読について東京女子医科大学の岩田誠氏と英国MRCのカラリン・パターソン氏の解説が加えられている.ついで第3章では同様の障害を体験したA氏,T氏,K氏からのメッセージが紹介され,第4章で30年前に発症し社会復帰を果たしたU氏とその夫人と治療を担当した国際医療福祉大学の笹沼澄子氏による座談会の様子が紹介されている.最後に第5章では,純粋失読を含めた高次脳機能障害に対する取り組みの現状と問題が解説されている.
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