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I.はじめに
純粋失読は別名「失書を伴わない失読」とも言われるように,自発書字や書取りがほぼ保たれているにもかかわらず,若しい失読を示すことが大きな特徴で,自筆の文章でも後では読みかえすことが困難である。失読の程度からは,字も語も読めない全失読,ついで欧米では個個のアルファベットは読み得ても単語は読めない語性失読,さらに軽症になると文の失読(Ajuriaguerra et Hé—caen,1964)を呈する。ある程度,文字が読めるようになると,「ね」を「れ」,「く」を「へ」と読むような形態類似の錯読が認められる。しかし,字形を指でたどるschreibendes Lesenなど体性感覚的経路による読みはほぼ可能である。ついで,とくに発病初期には写字障害も認められる。これに対して,音声言語では軽度の語健忘を伴うことがあるほかはとくに障害がない。随伴症状としては,色彩失認が最も多く,ときに物体失認ないし視覚失語(Freund,1889)を伴うこともある。その他,記銘障害や右同名半盲がほとんどの例に認められる。
さて,どの純粋失読はDejerine (1892)やFoix (1925)により,視覚領域と言語領域とのしゃ断(interruption)に基づくとみなされてきたが(倉知ら,1975),Gesch—wind (1965)も言語領野との離断(disconnexion)の古典的な模範例として純粋失読を挙げ,左視覚領の病変により右同名半盲が生じ,これに加えて脳梁膨大に損傷があると,右後頭葉と左言語領野との結合も離断され,患者は視覚的には文字を読むことができなくなると説明している。このdisconnexion theQryは神経心理学のいわば神経解剖学的理論であるから,まず自験例を中心に純粋失読の病理所見を概観し,ついで臨床的側面についても言及することにしたい。
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