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はじめに
わが国における脳卒中診療は,この6年間に大きく変化してきた.まず,脳梗塞の特効薬とも言える血栓融解薬rt-PA静注療法が2005年に保険診療の対象になり,24時間それに対応できる脳卒中ケアユニット(stroke care unit;SCU)といった脳卒中の初期治療システムが注目されるようになった.つぎに,脳梗塞発症後,rt-PA投与まで3時間以内という制約があり,病院到着から診断,投与までの院内体制の確立は必須であったため,地域住民の認識や救急隊の予診能力などにも焦点が当てられるようになった.また,亜急性期,慢性期を支える医療保険や介護保険でのリハビリテーションのシステムの充実が図られ,地域の病病連携,病診連携,回復期リハビリテーションの充実が図られた.
さらに,理想的な脳卒中治療システムとして脳卒中ユニット(stroke unit;SU)が登場した.脳卒中の急性期リハビリテーションのあり方も見直されるようになり,脳卒中診療にかかわる5学会,すなわち,脳卒中学会,脳神経外科学会,神経学会,神経治療学会,リハビリテーション医学会が合同で発表した脳卒中ガイドライン20041)では,今まで以上に急性期からのリハビリテーション介入の重要性が説かれるとともに,急性期からのリハビリテーション介入の安全性と有効性が明記され,特にSUによるリハビリテーション介入効果のエビデンスはⅠaと高く評価された.また,脳卒中専門職の集団が関与するSUリハビリテーションもグレードAで推奨された.
また,2006年4月にリハビリテーション分野では大きな診療報酬体制の変更があり,疾患別リハビリテーションの導入とリハビリテーションの算定日数の上限が設けられた.脳卒中も運動器や呼吸器,心疾患などとともに,1つのリハビリテーション疾患単位に位置づけられ,原則として180日以内にリハビリテーションを終結することが求められた.2007年4月には従来から促されていた早期リハビリテーション介入重視の路線が再浮上し,同じ180日でも後半からは診療報酬が漸減することになった.リハビリテーションの診療報酬は包括支払制の外にあるが,DPC(diagnosis procedure combination)包括医療の浸透による平均在院日数短縮の流れはリハビリテーションの急性期介入,効率的介入に拍車をかけている.したがって,SUに求められるリハビリテーションの役割は今後の急性期リハビリテーション医療を占う意味でも重要と考えられる.
一方,マスコミでは2007年7月からはACジャパン(旧公共広告機構)のテレビによる脳卒中キャンペーンCMとして,元日本サッカーチーム代表監督のオシム氏が出演して話題になった.これにより,社会的にも脳卒中治療が注目されるに至った.
また2009年には,脳卒中治療ガイドラインの改訂2)でも,SUは発症1年後や10年後の長期的なADL(activities of daily living)の改善のみならず生存率も改善するとし,SUのチーム医療精神の重要性を改めて強調している.しかし,付記としてわが国では,まだ海外のような多面的リハビリテーションを行うSUは少ないことを指摘している.
本稿では,わが国における脳卒中リハビリテーションの新しい展開として,SUのシステムの今後のあり方,地域連携システムの新しい構築とその重要性などについて文献考察も含めて概説する.
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