Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「おとうと」(市川崑版)―大正時代のADHD者と山田洋次版「おとうと」に引き継がれた現代の課題
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.1017
発行日 2011年10月10日
Published Date 2011/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102253
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本誌2010年5月号の本欄で取り上げた山田洋次版「おとうと」は,市川崑版「おとうと」(1960)へのオマージュであることを字幕で明らかにしている.両作とも発達障害的性質を抱える人物を登場させており,市川版ではADHD(注意欠陥多動性障害)傾向の強い碧郎(川口浩)だが,山田版では碧郎に当たる鉄郎に加えて,新たに祐一を配している.
市川版の碧郎は大正時代の人物であり,若くして肺結核で命を落としている.山田は,市川版「おとうと・碧郎」が生きていたら,果たしてどんな人間になっていったのか,さらに,周囲はどのようにつながっていったのか,というその後の碧郎と家族のありさまを描こうとして,山田版「おとうと」を企図した1).つまり,山田版における笑福亭鶴瓶演じる鉄郎は,時空を超えた碧郎の晩年の姿だったのだ.
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