連載 印象に残ったリハビリテーション事例
びまん性軸索損傷:妻を介護する夫の苦悩の8年間―診断の遅れと自賠責再審査の問題点
田中 信行
1,2
1鹿児島大学
2大勝病院
キーワード:
びまん性軸索損傷
,
高次脳機能障害
,
自賠責
,
異議申請
Keyword:
びまん性軸索損傷
,
高次脳機能障害
,
自賠責
,
異議申請
pp.598-599
発行日 2011年6月10日
Published Date 2011/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102109
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- 文献概要
事故であれ病気であれ,脳損傷のもたらす本人や家族の悩みは図り知れない.特にそれが交通事故による重度脳損傷の場合,自賠責は被害者の経済的負担や怒りを和らげる一つの方法ではあるが,誤って低い認定がなされると,被害者の生活の困難も加害者への怒りも癒されない.
本事例も交通事故であるが,脳画像所見が軽かったために重度の身体障害と多彩な高次脳機能障害も「心因反応」と診断され,自賠責等級も12級であった.4年後,筆者が「左片麻痺とびまん性軸索損傷(diffuse axonal injury;DAI)」と診断し,2度の異議申請を行ったが,「画像所見が軽く,カルテに麻痺の記載なし」として却下された.夫は重度障害の妻を8年間献身的に介護しており,その悲しみとやり場のない怒りに堪える姿に敬意さえ覚えている.
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