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はじめに
認知症の非薬物療法あるいはリハビリテーションでは,認知機能の改善のみでなく,認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD),日常生活機能(activities of daily living;ADL),生活の質(quality of life;QOL)の改善を目指して行われる.
よく行われている内容として,リアリティ・オリエンテーション(RO),回想法,音楽療法,運動療法などがある.ROは季節や日付などを確認しながら,見当識などの能力を高めるものであり,回想法は,認知症が進行しても保たれている長期記憶を活用して,懐かしい話をしながら心理的な安定を図る心理療法である.
非薬物療法は,内容や効果測定に用いる指標,実践者,環境によっても結果が左右されるうえに,条件の統制が難しいことや,対照をおいた報告が少ないことから,エビデンスの乏しさが指摘されている1).しかし,2003年,イギリスでROと回想法の有用な要素を系統的にまとめたcognitive stimulation therapy(CST)が開発された.CSTは大規模な多施設におけるランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)で,認知症高齢者の認知機能やQOLの改善に有効であることが明らかとなった2).イギリスの認知症診療ガイドラインに採用され,地域の通所サービスや高齢者施設で実践されている.
CSTは,軽度から中等度の認知症に対する小グループ療法で,テーマを設定した14セッションからなり,週2回7週実施する.CSTは,パーソン・センタード・ケアに基づくアプローチであり,認知症高齢者の興味,能力に適した内容を行い,テーマに適した写真や実物,音など多面的な刺激を用いて進められる3).認知症高齢者の思いや考えを尊重し,保たれている能力や強みを活用して行うため,認知症高齢者が楽しく参加でき,他者とのコミュニケーション能力が賦活される4).
欧米の高齢者は,集団のなかで自分の意見を主張することに慣れている人が多く,集団でのCSTの実施が適しているが,わが国の国民性や文化を考慮すると,集団で行うよりも,1対1で個別に実施するほうが,より望ましいと考えられる.そこで本稿では,CSTの基本的な考えを継承したうえで,1対1で実施できる「いきいきリハビリ」を開発したので紹介する5).さらに最近,注目されている若年性認知症について概説するとともに,就労リハビリテーションとして,精神障害者授産施設での福祉的就労の実践例も紹介する.
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