Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「悪人」―母親に捨てられた男のもがきと寄る辺なさ
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.1203
発行日 2010年12月10日
Published Date 2010/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101921
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中学校の教員だったころ,職員間の会話で「ショボイ」という言葉がよく使われていた.「小さい」とか「取るに足らない」といった意味だ.中学校教員の苦労の種は生徒や保護者,あるいは職員が作り出す日常の小さな出来事のなかにある.頭の中で一度は「ショボイ」なと低く解釈するものの,無視はできないと考え直す.素早く対応しなければ,問題を拡散させたり,肥大化させる場合もあるからだ.
「悪人」(監督/李相日)が描いたのは,将来の夢や中期的なテーマもない,いわば惰性で生きている人々の「ショボイ」エピソードと,その集積が招いた悲劇である.
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