鏡下囁語
声の大きい人に悪人はいない,か?
廣瀬 肇
1
1東京大学
pp.1128-1130
発行日 2014年12月20日
Published Date 2014/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200080
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声の大きい人に悪人はいないという諺があるという。本当に,そういう諺があるのだろうか,気になっていた。というのも,私自身かなり声が大きいほうだと思っているからである。
いろいろ調べてみたが,どうも伝聞ばかりで,はっきりしない。わずかに,明治43(1910)年に,藤井乙男という人が編集,刊行した諺語大辞典1)に,それらしい記載があることがわかった(図1)。それは“馬方船頭遠方の人,まぁ大きな声するやつに悪いやつはいない(うまかたせんどうをちのひと,まぁおおきなこえするやつにわるいやつはいない)”というものである。つまり馬方や船頭,遠くにいる人など,ともかく地声の大きな人(がさつで下品な人)に悪人はいない,というのも,悪人は,たいてい小声で悪事をささやくものだからだ,という解説になっている。
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