書評
伊藤利之・他(編)「新版 日常生活活動(ADL)―評価と支援の実際」
佐伯 覚
1
1産業医科大学リハビリテーション医学講座
pp.691
発行日 2010年7月10日
Published Date 2010/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101815
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ADLはリハビリテーションの中核概念であり,ADLの位置づけや方向性は,その時代のリハビリテーションの思想を反映しているといってもよい.本書は,わが国に導入されたADLの概念の混乱を整理し,その評価法の基準化を試みるために,故・土屋弘吉,今田 拓,大川嗣雄の諸先生方が中心となり,1978年,わが国におけるADLに関する最初の単行本として刊行された.また,教科書や参考書として,あるいは,臨床のマニュアルとして幅広く使用され,時代の変遷に合わせて第2版,第3版と版を重ねてきた.ADLの視点から,この間のリハビリテーションの歴史を映し出していると言っても過言ではないであろう.
第3版の改訂以降の18年間にリハビリテーションを取り巻く状況は大きく変った.国際障害分類(ICIDH)から国際生活機能分類(ICF)への障害枠組みの転換,介護保険法,障害者自立支援法,バリアフリー法などの法制度の整備,コンピューター技術やハイテク機器の福祉機器への導入などである.ADL評価も10年ほど前はBarthel Indexが主流であったが,現在はFIMがその中心となっており,評価項目の難易度による解析など,より高度な分析が加えられるようになってきた.障害者のADLへの対応も大きな変化を要求されている今日,第3版以降の新たな知見を加味した本書が「新版」として刊行されることは願ってもないことである.
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