書評
松村真司・他(著)「在宅医療チームスタッフのための薬剤手帳」
橋本 圭司
1
1独立行政法人国立成育医療研究センターリハビリテーション科
pp.675
発行日 2010年7月10日
Published Date 2010/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101812
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まず本書を手にした時の感想は,「コンパクト」,「親しみやすい」,「かわいらしい」といったものだった.実際の書籍の内容も,表題やkey words,「注意したい副作用」,「これがポイント」といった最も知りたい内容が,すぐに目に飛び込んでくるように配置されている.日頃から,よく扱うメジャーな薬剤について,その基本的な作用や使用に際しての注意点について明解に解説し,そして,そこからわれわれ在宅医療に関わるスタッフが,何を考えたらよいのかの道筋を示してくれている.
しかしながら,本書の醍醐味は,決してその使いやすさにとどまっていない.著者らの根底に流れているのは,地域医療で最も必要とされるリハビリテーションマインドに他ならない.在宅医療は1人では解決せず,患者や家族,それを取り巻くあらゆる人々が支えるチーム医療であり,その根底を支えるものは,地域の絆である.在宅で行う治療は薬の投与が主体であるが,薬はあくまでもツールであり,これらのみで在宅医療が完結することは決してない.リハビリテーションに関わるスタッフは,それぞれの職種ごとに得意不得意が存在し,時に「知識の壁」にぶちあたり,その結果としてコミュニケーションが断絶してしまいかねない.そのような危機にさらされているわれわれにとって,在宅医療に関わるすべてのスタッフが,これらのツールについての共通知識をもつことで,活発なコミュニケーションと連携を深めることこそが,在宅における地域リハビリテーションに最も必要なことのように思われる.本書は,在宅医療に必須である薬剤に関する共通の知識を習得することを通じて,あらゆる壁をぶち抜くパワーを与えてくれる良書である.
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