書評
大谷藤郎(著)「ひかりの足跡―ハンセン病・精神障害とわが師わが友」
江藤 文夫
1
1国立障害者リハビリテーションセンター
pp.44
発行日 2010年1月10日
Published Date 2010/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101681
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著者である大谷藤郎氏は,元厚生省医務局長で,退官後は「らい予防法」の廃止に努め,ハンセン病患者や精神障害者の人権回復に尽力され,1993年には公衆衛生領域の最高の賞であるレオン・ベルナール賞を受賞された.本書には大谷氏のこうした活動の源泉であり,思想形成に影響を与えた人々の紹介とともにご自身の半生を叙述し,障害差別と戦う人々へのメッセージがこめられている.障害者の支援に関わるリハビリテーション分野のさまざまな職種を超えて,大勢の方にお読みいただきたいと願い,ご紹介させていただく.
大谷氏は1972年に,国立療養所課長に転じた.個人的な思い出で恐縮だが,その前年1971年の夏,本来なら卒業して医師免許を取得していたはずの同級生3人とともに奄美大島の和光園(ハンセン病療養所)に滞在した.名目は自発的夏期臨床実習であったが,楽しい思い出とともに今でも心に残っているのは,島で遊んだ子供たちの写真に添えて,ある子について「入所者の子は生まれると直ちに職員が引き取り育てることになっています」という職員からの手紙の文面だった.大谷氏は現役時代に療養所の処遇改善に多大な尽力をされたが,「らい予防法」の本質的な問題には言及できなかった.
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