Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
シェイクスピアの『ハムレット』(2)―善良な狂人と邪悪な健常者
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.1382
発行日 2007年11月10日
Published Date 2007/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101120
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『ハムレット』(福田恆存訳,新潮社)では,2人の人物が周囲から狂人扱いされている.父親殺しの復讐のために狂気を装うハムレットと,やはり父親を殺された後に発狂するオフィーリアであるが,そこには,善良な狂人と邪悪な健常者という対立の構図を認めることができる.
まずハムレットであるが,彼については「気高い御気性」の持ち主として,人並み優れた資質が次のように賞賛されている.「王子様にふさわしい秀でた眉,学者もおよばぬ深い御教養,武人も恐れをなす鮮かな剣のさばき.この国の運命をにない,一国の精華とあがめられ,流行の鑑,礼儀の手本,あらゆる人の讃美の的だった」.ハムレットのことは,敵役である国王のクローディアスでさえ,「動きやすい国民のあいだに人気がある」,「あれは民衆に愛されているのだ」と,その国民的な人気を認めている.また,もう一人の狂人であるオフィーリアも,兄から「五月の薔薇」,「いつの世にも恥じぬ美徳の持主.一点,非の打ちどころのない女でございました」と言われ,王妃からもいずれはハムレットの妻になったであろうと評価されている.
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