Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
シェイクスピアの『ハムレット』―幻覚患者の逡巡
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.190
発行日 2005年2月10日
Published Date 2005/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100052
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『ハムレット』(市河三喜・松浦嘉一訳,岩波文庫)のなかで,父親を殺されたハムレットが,叔父を犯人と知りながら復讐を躊躇するという,古来さまざまな論議を呼んできた事情の背景には,幻聴の指示・命令に対する逡巡という臨床的な現象をみることができる.
ハムレットが父親殺しの犯人が叔父のクローディアスであることを知ったのは,「われこそはなんじの父の霊なるぞ」と語る亡霊の言葉によってである.ハムレットは最初,この亡霊に対して,「なんじは天の善霊か,地獄の悪霊か」とその正体を訝っていたのだが,亡霊は,「父が無残にも非道にも殺害されたそのあだを打ち果せよ」と,ハムレットにのみ聞こえる声で,復讐を命じたのである.
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