Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
シェイクスピアの『リチャード三世』―悪意の障害者
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.691
発行日 1999年7月10日
Published Date 1999/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109021
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1593年に発表されたシェイクスピアの『リチャード三世』(福田恆存訳,新潮社)は,後にリチャード三世となるグロスターを主人公にした史劇だが,このグロスターなる人物は,障害あるがゆえに世間に悪意を抱く人間として描かれている.
『リチャード三世』の冒頭,グロスターは自らの身体的な障害を嘆いて,「ああ,俺という男は.造化のいたずら,出来そこない」,「寸たらずに切詰められ,ぶざまな半出来のまま,この世に放りだされた」と,独白する.そして,戦争も終わって武勲を誇るあてもなくなった今,グロスターは,自分のような人間には平和な世の中を楽しむことなどできないと思い込み,「思い切り悪党になって見せるぞ,ありとあらゆるこの世の慰みごとを呪ってやる」と決心するのである.
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